「命の教育」とFDの関係

コーディネーター 岩部浩三
(人文学部教授・大学教育センター主事)

さまざまな専門分野と接点を持ち、総合大学としての山口大学の特性を生かせるような教養教育は可能であるのか。受講者の興味関心をかき立て、課題探求を進めていくうちに、各学部の専門あるいは専門基礎的な内容と自然につながるようなテーマはないだろうか。そのような問いかけが、今回のこの講演会を開くきっかけになっています。個人的には、このテーマはその問いに答えられるものではないかと考えています。

さて、この講演会はFD活動の一環として実現されました。正直に申しますと、それは私の当初の意図にはなかったことで、やや意外にさえ感じられたのですが、今ここでFD活動としての意味づけを行っておくことは可能です。

現在、各学部学科等においては、Graduation Policy (GP) が制定され、それに従った形でカリキュラムを再定義すべき段階に来ております。本学では、特に「教養教育の理念・目標」が別にすでに制定されておりますので、それぞれのGPには教養教育に対応する内容が含まれていなければなりません。いわば教養教育版GPというべき内容を定め、共通教育と専門教育のカリキュラムの中でそれを実現することが求められます。教養教育版GPとは、共通教育カリキュラム等検討WGの中間答申(案)によれば、下記のようなものです。

  • A. 自ら課題を発見し、必要な情報を収集し、整理・分析し、判断し、課題解決に向けて表現し、発信し、行動し、交流することができる。
  • B. 日本語及び英語の実用的運用技能を身に付けるとともに、情報及び情報手段を主体的に選択し、活用するための基礎的な技術を身につける。
  • C.人間の身体と心の特性に関心を持ち、健康に生きるための知恵を常に求めようとする。
  • D.専門に関わらず、常に広い教養を求め、自分や他人の属する社会を多面的に理解しようと努力する。
  • E.自らが属する文化や社会の特徴を知り、その伝統と歴史を尊重すると同時に、他の文化や社会を受け入れ、尊重しながら、共に連帯し、自らもその発展に貢献しようと努力する。
  • F.新しい知識や知恵、そして技術に対する敬意を失わず、生涯にわたって学び続ける意欲を持つ。
  • G.環境やジェンダー、共生社会など現代的テーマに関わる総合的な領域に関して興味・関心を持ち、課題解決に向けて自発的に学び、行動し、発言することができる。

これらのGPは、共通教育の中だけで達成するものではなく、学部(専門)教育の中でも達成されるべき内容を含んでいます。しかしながら、それを効率的に実現する一つの方法として、GP内の複数の項目を同時に実現できるような授業科目を共通教育の中に用意するという方法も考えられます。例えば、この「命の教育」に関わるテーマは、上記のACDEGとの接点を持つことは明らかだと思われ、さらにFも関係してくる可能性もあります。もちろん、このような、カリキュラム設計における効率性という視点は、教育を考える場合には周辺的な問題にすぎません。しかし、大学を取り巻く環境が今後も厳しさを増すとすれば、どうしても欠かせない部分でもあります。

そもそも、私は効率性を第一に考えたわけではなく、本来、学生が高校卒業から専門(基礎)へと向かう転換期に行うべき教養教育のあるべき姿を問い、追い求めていたのでした。ところが、そのような試行錯誤は、実は教養教育GPをどのように実現させるかという技術的な問題に転化できるのではないかと思い始めています。授業内容を構想し設計するということは、教員としてどうしても必要な業務ですが、手探り状態でやみくもに試行錯誤するのではなく、GP項目を授業にどう取り込むかという技術的な作業として行うことができるかもしれない、ということです。

共通教育と学部(専門)教育は、GP実現という面からは明確に区分することはできないという事実も、教育の本質的な部分と関わっているように感じます。共通教育と学部専門教育の接続ということが問題にされることがありますが、それはあくまで実施体制上の問題であって、純粋に教育面から見ればそれらは初めから一体のものであり、接続の問題など存在しないのではないかという見通しにつながっています。

当日は、講演の内容面について、「さまざまな課題を発見する」ということが中心になるかと思いますし、学生のみなさんには特にそうあって欲しいと願っていますが、その背景には教員としてのFDがあるということを一言申し述べさせていただきました。

開催日時や講師、パネリストなど詳しいことはFDポスター(PDF)をご覧下さい。

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